Reprint from "The Voice of Blue fortune" News magazine intervier to administrator Halconf

記事は、惑星「大空陸」における、シムラークルム宮国の発行する、週間ニュース雑誌
 「蒼泉の声」 (そうせん=青い泉の声)
に掲載された、執政官ハルコンフと、来訪者であり写真家、ジャーナリストである私こと、ユイのインタビュー記事転載である。


ユイ: 私は、この星系において、始めての男性、しかも政治家と会話をし、ひいてはインタビューまですることに緊張している。


ハルコンフ
こんにちは、来訪者を心より歓迎します
訪問者ユイ、今日の取材内容は、当局で一度預かった上で、5月第2週の印刷へのスケジュール「蒼泉の声」 (そうせん=青い泉の声)に掲載される予定ですよ。


*.はじめに想像していたのは、もっと女性的な、そう、確かに宝塚の男役のような女性的な外観の女性、この星の男性はそうではないかと私は想像していた。 なにしろ当初は全て女性、いや少女で「産まれて」くると聞いていたのだから無理もない。
けれども「彼」は思っていたよりずっと男性的だった。
背も私達地球の女性よりは一廻り大きかったし、体もしっかりしていた。
唯一の例外、顔の面取りと低めのアルトの声、腰や足つきに残る、わずかな女性の骨格の名残りを除いては。


ハルコンフ: どうかしました?レディ?

イ :あ、いいえ? ではインタビューを続けます
    では執政官、今回「アルゲントゥム礁国」の空からの侵入に関する意見を聞きたく思います。



ハルコンフ

これは明らかな侵略行為です。テンプス・パティウムのご威光に支えられ、神聖なるわが国の貴重な財産を奪おうとする、野望の企てに過ぎません。

幸い、私たちの聖なる国は海洋と険しい山脈、によって他国の邪まな企てから切り離されてきました。
いかなる敵も、航空機か又は艦隊を差し向けない限りわが国に侵入することは出来ません。しかしそれは神の乗機「シムーン」によって守護されています。
今までのところ、彼らの原始的な科学力ではわが国のシムーンを落とすことは出来ないと考えています。


ユイ:今までのところ??


ハルコンフ

そうです、貴女の話を聞くところによれば、アルゲントゥム礁国の民は高度な全体主義国家ということですな。確かその・・・・・・


ユイ:そうですね。私達の星系でも、過去の崩壊した国家で、ソビエト連邦やナチスと名乗る全体主義国家がありました。


ハルコンフ

どこにおいても似たようなものですな。アルゲントゥムの国民は肉体の性別を選ぶ権利はもちろん社会的性別役割(ジェンダー)さえをも生後わずかのうちに管理局によって決定されます。
その大半は、アンドロゲンホルモンと外科的手術により不要な女性器官を切除され、富国強兵策の為の兵士と工場労働者である男性として製造されます。


 

イ:私たちの星系では、一般に男性の方が肉体的能力に優れますが、骨格が同じ女性のものであってもそうですか?


ハルコンフ

あなた方の世界のことは判りませんが、我々の世界ではそうです。
アルゲントゥムの国民は、そうして、人口のわずかのうちの女性が「赤ん坊を産む生産機械」として残されます。
それは昔読んだパルプマガジンの架空小説のような悪夢です。

アルゲントゥムの川の水と空は汚濁して腐っています、そのためにかの国で暮らす人々の大部分が公害病に苦しみます。
確かに、私たちの国はにおいても本当の意味での、個人による自己の自由な性別選択は、貴女の指摘する通り実現出来ていないのかもしれないが、少なくとも、17歳までの間に自分の行くべき道を考えることは出来る、それは良いことだとは思えませんか?

それでも決められない者は、テンプスパティム神が決定するだけのことです。
人類が生きていく上で、人の半少なくとも半分は男性で無くてはならない以上、ある程度の義務が生じるのは仕方ないことです。

それでもかの国よりはずっとましだと思いませんか?
私は、泉以後の半生の男としての本懐には誇りを持っています。 社会的地位も、素晴らしいパートナーにも、そして国を誇るべき「黄金の巫女」の誉れを得た、素晴らしい娘を得ました。

これ以上望んだらむしろ罰が起きるのではと思うくらいですよ。



訳者ユイの付記
*....私は西暦2004年に日本国で公開された、キリヤ監督の映画"Casshern"を想いだしました。
汚染によって国民の大半が公害病で苦しみ、奇形生物や奇形児の産まれる世界、アジアの架空の連邦、上条将軍の意思によってのみ支配された恐怖政治の国・・・



ユイ:今後どのように、海の向こうのかの国、アルゲントゥムと戦っていくおつもりですか?



ハルコンフ
私は国民に呼びかけたい 「汝の敵。アルゲントゥムを知れ!」 と


ユイ:「最近、貴方の国の領土内に、墜落した浮揚戦闘機から脱出したかの国の兵士が侵入していたという未確認情報も聞きましたが、志願兵の働きによって駆逐されたとの噂も聞きますが?」


ハルコンフ
わが国はこれまで、天然の要塞ともいうべき大洋と、天然の防波堤ともいうべき、険しい山脈によって、他国の侵略から護られてきました。

しかしこれからはそれだけで万全というわけにはいかなくなるのは私たちも判っています。
戦争に慣れたアルゲントゥムに対して、今までの巫女とシムーンのみに頼るやり方では、今後足りなくなるかもしれません。そのことについては、軍事機密の為、ここで貴女に話すことは出来ませんが、今後については既に将来の展開を考えています。


ユイ::最後に話を変えさせて頂きますが、あなたの娘Nevirilさんが黄金の巫女(シビュラ・アウリア)としてシムーンのコール(飛行隊)のレジーナ(飛行指揮隊長)として前線で戦っているのは、貴方の政治家としての正義と国民に対する公平の示証しであると考えてよいのでしょうか?


ハルコンフ
レデイ・ユイ、私は,まず第一に執政官です。だが同時に1人娘の男親でもあります。もちろん父親として、娘の無事を願わないものではありません。が、少なくとも、国民の期待に恥じないよう、執政官の娘として立派に勤めを果たすことを切望しています。
娘が部下を率いて、最低限の損失で不埒な侵略国家を駆逐するとき、そうして無事に帰還してくる度に、こう言ってあげたく思っています。
「おかえり、ネヴィリル」


ユイ:今日はお忙しいところ、異国の記者の問いかけにお付き合いいただき、本当にありがとうございました。閣下、御武運と祖国の栄光を私も願わせていただきます。